その体の不調はサイレントキラー・慢性炎症かも?免疫と炎症の仕組み

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いつまでも疲れが取れない。毎日倦怠感を感じる。はっきりした理由が分からない体調不良が続く。

その不調は、身体の中で起こっている慢性炎症が原因かもしれません。これまで免疫が身体を守る仕組みについてお話してきましたが、免疫のはたらきは身体にとって味方でもあり敵にもなる、そんな意外な仕組みも最近の研究でわかってきました。

この記事では、健康診断ではわからない、サイレントキラー・慢性炎症について解説します。

異物が侵入したり、強い刺激を受けると炎症が起きる

病気やケガで病院に行くと、「炎症を起こしている」と医師に診断されることがあります。炎症は身体にとって良くないことのように思われていますが、そもそも炎症とは身体が何らかのダメージを受けたときに起きる反応で、つまり、身体を守る免疫の仕組みの一つです。感染や外傷から回復するために欠かせない仕組みと言えます。

例えば皮膚で炎症が起きる皮膚炎は、刺激の強い物質、日光、アレルギー原因物質など、外からの要因とその人の体調や皮膚の状態、体質が絡み合うことで起こります。

炎症は皮膚のほかにも、喉、眼、胃腸などいろいろな場所で起こります。この時、いったい身体はどのような状態になっているのでしょうか。

炎症の代表的な徴候は発赤・腫脹・熱感・痛みです。これらの徴候は、主として身体が侵襲(しんしゅう ※1)を受けたときに現れる変化として知られています。

炎症が起こる仕組みは、さまざまな研究によって少しずつ解明されてきました。炎症には急性と慢性があり、実は多くの病気に炎症性の変化があるということも明らかになってきました。

※1 侵襲とは
医学用語の侵襲(しんしゅう)とは、身体に何らかの変化をもたらす外からの刺激のこと。ウィルスや菌が体内に入って感染すること、手術や外科治療で体を直接傷つけること、注射を打つこと、薬を飲むことで起こる内臓への刺激など。

炎症は免疫細胞が異物を攻撃する仕組み

炎症は免疫の仕組みで起こります。私たちの身体が有害な刺激を受けたり、異物に侵入されたりすると、自らを守るために起こる防御反応が炎症なのです。

風邪をひくと熱が出たり、喉が赤く腫れたりするのは、炎症反応によって自分の細胞までダメージを受けてしまった結果です。

炎症反応は、急性炎症と慢性炎症に分けられます。急性炎症は主に自然免疫反応によるものです。自然免疫とは、身体に異常が発生した時に最初に働き始める第一防衛システムです。

参照【病原体から身体を守る!自然免疫と獲得免疫のすごいシステム】
第2章「まずは、食べて殺す」自然免疫は防衛の最前線

病原体から身体を守る!自然免疫と獲得免疫のすごいシステム
免疫の仕組みは二段構えで作られています。ライフサイクルで大きく変化する免疫はウィルスや細菌などと戦いながら年齢とともに成熟していきますが、老化を逃れることはできません。近年の研究では「免疫と老化」の仕組みや、ビタミンDは免疫にとって重要な栄養であるとわかってきました。

第一防衛システムでは、マクロファージや好中球、ナチュラルキラー細胞といった免疫細胞が異物を認識して、すぐに攻撃を始めることで炎症が起こります。このとき免疫細胞は、炎症を引き起こす物質の炎症性のサイトカイン(※2)を放出します。

サイトカインには、

(1)免疫細胞を活性化させるもの
(2)免疫細胞を抑制するもの

この両方があって、免疫機能のバランスを保つために重要な役割を担っています。

※2 サイトカインとは
細胞から放出されるたんぱく質の総称で、細胞から細胞へ情報を伝達する物質。サイトカインの機能はさまざまで、免疫や炎症に関する能力を持つサイトカインが多いことがわかっている。

コロナ感染症で話題になった「免疫活性と抑制のバランス」

新型コロナ感染症で重症化した患者に「サイトカイン ストーム」が起こっていたことが大きく報道されました。免疫細胞がウイルスと戦うために放出するサイトカインが制御不能となって、放出され続けてしまうのがサイトカインストームです。

サイトカインがこのように暴走状態になると、自分の細胞まで傷つけてしまい、炎症が悪化する状態が続いてしまいます。

サイトカインストームは、次にあげる項目に該当する方々に多いということがわかっています。

 男性
 高血圧
 糖尿病
 脂質異常
 肥満
 喫煙者
 偏食者

香港 の研究チームの報告では、新型コロナ感染症の重症患者と軽症患者の便を分析したところ、重傷者の腸内細菌叢(フローラ)はバランスが崩れていて、善玉菌が少なかったとされています。

新型コロナ感染症で、改めて私たちの身近には多くの感染症の脅威があることがわかりました。未知のウィルスによる感染症に対抗するために、免疫の活性と抑制のバランスをどう健全に保てば良いのか、そこが大きなポイントとなるでしょう。

こちらの記事では、免疫と腸内環境の関係についてご紹介しています。ぜひ合わせてお読みください。

ダイエットは腸内環境が大事!感染症、がん、アレルギーも関係|腸内環境 Vol.1
腸内細菌の状態は感染症をはじめとした病気だけではなく、免疫機能とも関わりがあることがわかってきました。では腸内環境を改善し、保つには何が必要なのでしょうか。この記事で詳しくご紹介いたします。

なんとなく不調から深刻な病気まで、慢性炎症が関連

炎症は本来、身体を守るためのメカニズムなのですが、このコントロールがうまくいかなくなると自分の組織を破壊し、病気の発生につながることが最近の研究でわかってきました。

炎症は、急性炎症と慢性炎症の2つに大きく分けられます。急性炎症は免疫の活性と抑制のバランスが健全であれば、比較的早く治ります。しかし、長引く慢性炎症は身体の組織へのダメージが長く続くため、さまざまな病気に結びつきます

慢性炎症を伴う病気にはさまざまな種類がありますが、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患や関節リウマチなどの自己免疫性疾患が良く知られています。

これらの病気はすぐに死んでしまうような病気ではありませんが、長期に身体の不調が続いて、生活の質(QOL)が落ちてしまいます。慢性炎症がもっと続くと、患部の組織に変化が起こり、本来の機能に障害をきたすこともあります。

慢性炎症が長引くと様々な病気の引き金に

過去、日本人に一番多いがんは胃がんでした。それは、塩分の多い食事、ストレス、過度な飲酒習慣、喫煙などによる胃の慢性炎症から発症すると考えられてきました。

しかし、最近では胃がんの99%がピロリ菌の感染によるものだということがわかっています。ピロリ菌が胃粘膜を傷つけることで胃に慢性炎症が起きて、がんの原因となっていたのです。

がんの少なくとも20%以上が、慢性炎症と関連があると言われています。消化器のがんに限っても、胃がんだけでなく、肝細胞がん、膵がん、大腸がん、胆嚢がん、食道がんなど、慢性炎症がもとになっているがんは多いのです。

最近の研究によって、これまで慢性炎症との関連についてほとんど研究されてこなかった病気でも、実は慢性炎症が関わっていることがわかってきました。

加齢とともに増加するがん動脈硬化肥満、さらには「老化」そのものも慢性的な炎症性の変化によって進行するのではないか、と考えられる証拠が研究によって見つかってきました。

また、慢性炎症は脳でも生じることが確認されています。脳内の炎症は、うつ病やそのほかの精神疾患、多発性硬化症など、さまざまな疾患と関連づけられていて、最近では、アルツハイマー病との関連も報告されています。

慢性炎症は、あなたにも起こっているかも?

慢性炎症が起きやすくなる背景として、次の3つが考えられています。

1. 自分の細胞が死んで、炎症の原因になる

私たちの身体には、成人でおよそ60兆個の細胞があって、毎日約3,000億個の細胞が死んで新しい細胞と入れ替わります。

死んだ細胞は身体には異物と認識されるので、免疫細胞のマクロファージが食べて排除します。しかし、加齢に伴ってマクロファージの機能が低下すると、死んだ細胞に食べ残しが出てきます。

死んだ細胞は免疫細胞にとって異物(刺激)となるので、炎症が収束しなくなります。その結果、慢性的に炎症が続く状態になってしまいます。

参照【病原体から身体を守る!自然免疫と獲得免疫のすごいシステム】
第9章「免疫の老化で身体には何が起こる?」

病原体から身体を守る!自然免疫と獲得免疫のすごいシステム
免疫の仕組みは二段構えで作られています。ライフサイクルで大きく変化する免疫はウィルスや細菌などと戦いながら年齢とともに成熟していきますが、老化を逃れることはできません。近年の研究では「免疫と老化」の仕組みや、ビタミンDは免疫にとって重要な栄養であるとわかってきました。

2. 細胞自体が老化する

細胞が老化すると、炎症作用や発がん促進作用のある炎症性サイトカインなどのさまざまな物質が分泌されることが明らかになってきました。

老化した細胞が、そのまま長期に身体の中に蓄積すると、周囲の組織に慢性炎症や発がんが引き起こされてると考えらています。

3. 加齢によって全身的な変化が起こる

加齢に伴う代謝や内分泌系の変化も、炎症を促進する可能性があると考えられています。例えば、女性男性に関わらず、更年期などによるホルモン濃度の変化によって慢性炎症が誘導されることがわかっています。

また、加齢により、本来脂肪をためておく場所である皮下脂肪の機能が低下して皮下脂肪の量が減ると、行き場所を失った脂肪組織は内臓脂肪や本来は脂肪が蓄積しない肝臓、筋肉、骨髄などに蓄積するようになります。内臓に蓄積した脂肪は、その組織で炎症を誘導することが明らかになっています。

このように、加齢に伴う要因が、慢性炎症の原因となっていることがわかってきました。急性炎症のようなわかりやすい自覚症状(腫れ、痛み、赤み、熱など)が無いので、慢性炎症は自覚できないことが多いのです。

40代から50代にかけて急激に病気が増え始める背景に、このサイレントキラー慢性炎症が関与していることが多いことがわかってきました。

太っているだけで、若くても簡単にリスクが高くなる

さまざまな原因で起きる「慢性炎症」ですが、注目されているのが肥満です。

食べ過ぎや運動不足などによって肥満になると、脂肪細胞が脂肪を溜め込み大きく膨らみます。するとそこへ免疫細胞が集まって炎症を起こすことがわかってきました。

膨れ上がった脂肪細胞を「排除すべきだ」と判断した免疫が、それを排除しようとして炎症を起こすと考えられています。

若くても肥満だと生活習慣病に罹りやすいのは、このような背景が原因の一つと考えられています。

慢性炎症を予防したい人に、今わかっていること

高齢者でなくても、太っていなくても、不摂生な生活や精神的ストレス、栄養の偏りや食物中の添加物・有害重金属など、慢性炎症を悪化させる原因は日常生活のあらゆるところに潜んでいます。

慢性炎症から病気にならないために、毎日の生活に気をつけたいものです。

慢性炎症を軽減すると考えられる生活のポイント

 腸内環境を改善して免疫力を健全に保つ
 肥満にならないような食事と運動を心がける
 悪いストレスから離れる
 抗酸化食品を摂る