年齢を重ねるとスタミナがなくなります。身体の老化によって病気になりやすくなり、脳の機能も衰えてきます。
もともと私たちの体内にある「NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」という物質が加齢に伴い減少して、老化に伴う不調や病気の原因になることがわかってきました。
「NAD」を体内で作るための材料となるのが、「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」。NMNを摂取してNADの量を増やすことで長寿遺伝子を活性化し、老化を遅らせる可能性があると考えられています。
「NAD」と「NMN」は、いったいどんな物質なのでしょうか。
ある遺伝子が老化の仕組みを制御している
老化、それは誰もが避けたいもの。老化はサーチュインという遺伝子によって制御されているということが2000年に報告され、世界中で注目されました。
「生物に寿命がある理由」と「老化が進む仕組み」は、それまでほとんど解明されていませんでした。老化を制御しているというサーチュインの研究報告は画期的で、この発表があった後、サーチュインと老化の研究が世界中で爆発的に進んでいます。
2000年の発表ではサーチュイン遺伝子が活性化することで作られる酵素、サーチュインが他のさまざまな遺伝子の発現(※1)を制御するスイッチとして働き、しかも、その酵素が身体のエネルギー代謝にも強く関係していることが報告されました。
サーチュイン遺伝子が活性化してつくられるサーチュイン酵素ですが、その働きは2つあります。
1. 遺伝子発現を制御して正しく細胞を作る がんや炎症が進みにくい
2. エネルギー代謝を促進する 元気で太りにくい身体
つまり、健康に年齢を重ねるために必要な2つの機能が、サーチュインに関連しているということです。
※1 遺伝子の発現
成人でおよそ60兆個あると言われる細胞は、各細胞の役目を果たすために、それぞれが各機能を持つタンパク質を作り出します。タンパク質を作るためには、アミノ酸を正しい順番につなぐことが必要です。アミノ酸の正しい順番の情報は、DNAの中の遺伝子の部分にあります。
遺伝子の情報をもとにして、役割を果たすためのタンパク質を作るまでの過程を「遺伝子の発現」といいます。
人類が生き延びるために必要だったサーチュイン
サーチュインは生物が共通に持っている遺伝子ですが、食べるものが足りなくなった時などの飢餓状態に対応して、身体を制御することで生物の老化を遅らせる仕組みなのです。
食べたいだけ食事をしている状態 サーチュインは休眠状態
空腹状態、カロリーが足りない状態 サーチュインが活発に活動
これは、食物が枯渇して飢餓状態がしばらく続く状態になっても、生物がしばらく生き延びるためのメカニズムだと考えられています。
サーチュインが活性化すると、細胞内でエネルギー源を作り出すミトコンドリアが増えることがわかっています。ミトコンドリアが増えると、エネルギーが作られ元気になり、代謝が活発になるので脂肪の燃焼も進みます。
加えて、サーチュインが活性化すると、細胞内の異常なたんぱく質や古くなったミトコンドリアが除去される「オートファジー(自食作用)」という機能も働きます。オートファジーが細胞を修復し、新しい細胞が再生されることによって、
シミやシワの予防
動脈硬化の予防
糖尿病の予防
認知症の予防
など、身体にとってさまざまな良い結果が導かれます。そのため、サーチュインは健康寿命を延ばす夢の遺伝子と呼ばれています。
生命活動にはさまざまな酵素の助けが必要
身体の中では、食べ物を消化する時やエネルギーを生み出す時など、さまざまな化学反応が起こっています。
それぞれの反応を起こすために必要となるのが酵素です。生物が生命を維持するために身体の中で起こす化学反応のほとんどが酵素の助けを必要としています。
酵素はたんぱく質でできています。良く知られている「消化酵素」を始め、人間の体内には、約5,000種類の酵素があると言われています。
それほどたくさんの種類がある酵素ですが、それぞれ特定の反応しか触媒(化学反応を助けること)できません。
一方、補酵素(ほこうそ)というのは、酵素の活性を上げるために必要な物質で、多くがビタミンからできています。
補酵素もたくさんありますが、良く知られているものにコエンザイムQ10があります。補酵素は英語でコエンザイムといいます。
NADは老化の仕組みのカギを握る補酵素
サーチュイン酵素が働くためにも、ある補酵素が必要になります。その補酵素の名前が、NAD(ニコチアミドアデニンジヌクレオチド)です。サーチュインは、NADがないと作用を発揮できないのです。
NADは体内にもっとも多量に存在する補酵素で、身体のいたるところで働いています。私たちが生きていくうえで欠かせない補酵素と言っても良いでしょう。
健康に年齢を重ねるために必要なNADなのですが、加齢とともに減少していきます。
加齢とともに減るNADが不調と病気の原因に
体内に多量に存在しているNADが加齢とともに減少することが、ある年代から増加する糖尿病などの原因となっていることが最近の研究からわかってきました。
加齢だけでなく、特定の病気でも体内のNADが減少することが知られており、何らかの方法でNADを増やすことができれば、加齢と関連する病気の予防や治療ができるかもしれないという仮説が立てられました。
注目の成分NMNはNADを作る材料になる
NMNは酵母の研究から発見され、次世代の栄養成分として世界中から注目されています。NMNは身体の細胞の中に存在している成分ですが、緑黄色野菜やフルーツなどにも微量に含まれています。
NMNは体内に入ると、生物がエネルギーを生み出すための化学反応で重要な役割を果たすNADに変換されます。NADが細胞内のエネルギー生産に欠かせない補酵素で、老化の制御に重要な役割を果たすサーチュインを活性化させることは、前述のとおりです。
加齢で減っていくNADの材料となるNMNを摂ることで、老化を制御できる可能性があると考えられているのです。
あなたのまわりにある、老化を促進するもの
体内で発生する活性酸素 > 身体に備わっている抗酸化機能
このバランスが崩れてしまい、活性酸素が過剰になる状態が酸化ストレスです。
酸化ストレスは老化の大きな原因となることがわかっています。酸化ストレスを起こすリスクは、日常生活の中に多く存在しています。
紫外線
放射線
大気汚染
喫煙
薬剤
酸化した食物の摂取
食べ過ぎ
過度な運動
過度なストレス
また、最近話題になっている慢性炎症ですが、炎症が慢性になると炎症のブレーキが効かなくなり、免疫細胞が活性酸素を出し続ける状態が続いてしまいます。
日常生活では下記の点に気をつけて、身体が持っている抗酸化機能を健康に保つことが大切になるでしょう。
バランスの取れた食事
ポリフェノールやカロテノイドなど抗酸化物質の摂取
適度な運動
十分な睡眠
健康や老化遅延のために何かをするより、まずは酸化ストレスになることを止めてみることを優先してみましょう。
NMNサプリメントも多く売り出されていますが、とても高価なものもあります。信頼できる販売元か、価格に見合った効果が得られそうか、よく検討してから購入することをおすすめします。